佐野 明政(以下、佐野):あらためてコラボ企画の経緯を振り返ると、以前にビームスで “お酒がある時間の自由で楽しい過ごし方を発信するプロジェクト「焼酎のススメ。2020」" という取り組みを行ったのを日本盛さんも見てくださって、「ビームスはこんなこともできるんだ」と。そこから、何か一緒にできませんか? と、ご相談をいただいてスタートしました。
日本盛:まず私達の課題として、年齢を問わず日本酒離れが起きているというのがあります。その中でも愛飲いただいている方は、比較的高い年齢層の方に寄っているのが正直なところです。
佐野:たしかに20代、30代の方はハイボールやレモンサワーなど、日本酒以外を飲まれる印象があります。
日本盛:日本盛に限らず日本酒自体の需要がずっと下がってきていて、昭和47年のピーク時から直近だと30%くらいまで落ちている。なので、まず日本酒を知っていただくことから始めないといけない。
佐野:そうした課題や現状を聞かせていただくなかで、日本酒が正月やお祝い事といったハレの日に飲むものになってきてしまったというお話も出ましたよね。うちの父親もそうでしたけど、昔はビールか日本酒で乾杯をしていたものが、お酒の種類が増えて普段のお酒としての日本酒からは離れている。とくに、若者と日本酒の距離感が遠いと感じます。
日本盛:では、なぜ若い人が飲まないのか。ひとつには、飲み始めるきっかけがないのだと思います。特にコロナ禍になって、例えば会社の先輩に連れられて一緒に飲むこともなくなるし、家でも家族が日本酒を飲まない。そうなると、日本酒に馴染んでいく入り口がない。二日酔いになりやすいとか太りやすいみたいな、ちょっとネガティブなイメージもあるでしょう。
佐野:ありますね。あれは誰が言い出したんでしょうね。
日本盛:日本酒は味がおいしいからつい飲みすぎてしまう。その結果として二日酔いになることはありますけど、科学的な根拠はないらしいです。そういうネガティブキャンペーンみたいなのもあって、これをどうにか打破しなきゃいけないなと。
佐野:そこでビームスにお声がけいただいたわけですね。
日本盛:我々としては、いま飲んでくださっている高年齢層の方はもちろん、次世代のユーザーも開拓していく必要があるんです。そこの接点はビームスさんとマッチしているんだろうなと。
佐野:さきほど酒造りの現場を見学させていただきましたが、本当に手間のかかる作業をしていますよね。
日本盛:弊社は基本的に全行程を機械化していますが、それでも酒造りには杜氏の力が大事です。たとえば、蒸米したお米を「ひねり餅」と言って餅みたいにして固さを確認する作業などは、機械ではできません。
佐野:僕も実際にやらせていただきましたが、すごく熱かったです(笑)
日本盛:そう、慣れないと熱いんですよね。吟醸とか高級酒で使うお米は、あの段階でお米の硬さをみて、さらに吸水時間の調整をします。
佐野:今回のコラボ商品でも「大吟醸」と「本醸造」とがありますよね。あらためて、違いを教えていただけますか?
日本盛:簡単にいうと、大吟醸は精米歩合が50%以下、本醸造は70%以下で精米したものです。
佐野:精米歩合というのは、お米の周りをどれだけ削るかということですね。
日本盛:そうです。私達が普段から食べているお米は、だいたい精米歩合が92%なんですが、ボトル缶の「本醸造」が70%です。お酒の種類によって精米歩合はぜんぜん違います。
佐野:工場を拝見して、こんなにすごい手間ひまの中でできているんだってことをあらためて実感しました。でも、それが一般的にあまり知られていない。そこは、もっと発信していってもいいところだと思います。
日本盛:そうですね。でも、それで日本酒を特別なものと思わず日常のお酒として楽しんでほしいです。昨年、すべて手作業で酒造りを行える "SAKARI Craft "という設備を新設しまして。そこでつくるお酒は、全国新酒鑑評会という日本で一番権威ある会にも出品しています。杜氏が考えたこだわりのお酒を出品して、そこで金賞を獲るのが目標です。一方で、日々つくるボトル缶のような商品はお客さまが喜んでくれるお酒。その作り分けができるので、日本酒づくりってほんとうに奥深くて、面白いなと感じています。
佐野:皆さん、本当に楽しそうですよね。どんな人がつくっているのか、人となりみたいなものを知ってもらうことで、日本酒の魅力がもっと伝わればいいですね。
日本盛:これから、いまよりもお酒でたのしんでいただくシーンが減っていく未来も想像できますよね。飲むのは月に1回かもしれない。だけど、そのときに選ばれる商品になっていないといけないんだろうなと。
佐野:「大吟醸」と「本醸造」 のように、特別な時と普段で飲み分けられるのも日本酒の魅力ですからね。
日本盛:糖質・プリン体ゼロのお酒も販売していますが、日頃は健康のことを気にするかたも、大事なときにはやっぱりうまい酒に行きつくかもしれない。まさに、ハレの日にしか飲まなくなったときには本当にいいお酒を飲みたいじゃないですか。これからは、作り手がそういうものを突き詰めてもいいのかもしれないですよね。
「酒造りをしている杜氏の手はきれいだ」という話。あれってウワサ話なのかと思いきや、実際に会った杜氏さんたちの手はみんなツヤッツヤのモッチモチ。麹づくりで手がきれいになるっていうのは本当でした! ということで、日本盛のなかでもとくに美手の持ち主TOP3をご紹介。
- 杜氏歴
- 杜氏歴:5年(製造歴:30年)
- 日本酒のあて
- ひねぽん(炙ったひね鳥の肉のポン酢につけた播州名物。ちなみに、ひね鳥とは卵を産まなくなった鶏のこと)
- 自分の手について一言
- 意識したことがないですけど、麹造りをしているときれいな状態を維持できるのかな。わたしもそうですけど、湊も山口も昨年の12月から "SAKARI Craft" の麹室で毎日麹を触っていたんで、それもあって手がキレイになっているのかも。
- 製造歴
- 15年
- 日本酒のあて
- マグロのお刺身
- 自分の手について一言
- 自分でも意識したことがないですし、周りからもきれいとは言われないんですけど……。でも、指が長いからか「ピアノをやっていそうだね」っていうのはよく言われます。ピアノですか? やってないですね(笑)
- 製造歴
- 32年
- 日本酒のあて
- ナッツ類
- 自分の手について一言
- 自分の手について一言:仕事柄、寝る前のケアはちゃんとしますけど、きれいだって意識はないんですよ。中根が言うように、麹室で毎日麹を触ってからはつるつるした感じはしますね。やっぱり、酒造りが美肌の秘訣なのかも!?
お酒を美味しく飲むのに欠かせないのが、おつまみ。“肴(さかな)” とか "あて" なんて言い方もします。ちなみに "あて" は主に近畿地方で使われる言葉で「お酒にあてがうもの」という意味なんだとか。ビールやハイボールなら唐揚げだし、ワインならやっぱりチーズ! と、お酒が変われば "あて" も変わる。では、日本酒にはなにがあうの? ビームスの関西エリア屈指のお酒好きスタッフたちが日本酒に合うレシピを紹介。意外なメニューもあるけど、それはぜひ、作ってたしかめてみて!
山下紗代子(「ピルグリム サーフ+サプライ 京都」 スタッフ)
/ チャプチェ
【材料】
韓国春雨60g
牛肉こま切れ120g
ピーマン2個
にんじん30g(1/2本よりやや少ないくらい)
※砂糖大さじ2
※日本酒大さじ2
※みりん大さじ1
※醤油大さじ3
※鶏がらスープ粉末小さじ2(※は混ぜ合わせておく)
サラダ油適量(炒め用)
ごま油、白ごま適量(仕上げ用)
糸唐辛子(仕上げにお好みで)
【作り方】
春雨を表記通りに茹でて、ザルに上げて水気を切っておく
フライパンに油を敷き、中強火で牛肉、人参の順に炒める
牛肉の赤みが少なくなったら、春雨、ピーマンを入れて、混ぜながら炒める
具材が混ざったら※の調味料を入れて、絡めながら水分が少なくなるまで炒め、ごま油、白ごまを絡める
辛いのが好きな方は、最後に糸唐辛子を乗せて完成
甘さを控えめにすると、日本酒とのマリアージュが倍増します。ちびちびやるのにももってこいです!
杉原航(「ピルグリム サーフ+サプライ 京都」 スタッフ)
2015年入社。「ビームス ストリート 梅田」に2年、その後「ビームス 梅田」に2年勤務。サーフィン好きで一昨年の10月から「ピルグリム サーフ+サプライ 京都」に異動。紹介してくれたレシピは、お店の近くにあった定食屋さん直伝だとか。値段もリーズナブルでよく行っていたのが、残念ながら閉店することに。「どうしてもあそこの唐揚げが忘れられない!」と頼みこんだところ、快く(!?)レシピを教えてくれたとか。日本酒と唐揚げって合うの? と思いきや、結構イケるらしい。揚げたてをハッフハッフさせながら、日本酒でキュッと。想像しただけで、最高でしょ?
/ 鶏のからあげ
【材料】
鶏もも肉2枚
しょうが一片
にんにく一欠片
全卵2個
濃口しょうゆ大さじ2
塩少々
黒胡椒少々
片栗粉大さじ2杯
油(揚げる用)
マヨネーズ お好みで
【作り方】
鶏もも肉を一口大に切って塩胡椒をする。
おろししょうが、にんにく、たまご、しょうゆ、片栗粉を混ぜる。
②に①を入れて1晩寝かせる
③を弱火で10分ほど揚げて、きつね色になったら完成!
マヨネーズラブなので、ぜひマヨネーズをたっぷり目に。マジうまいんで!
松下恵(「ビームス ストリート 梅田」 スタッフ)
2013年入社。最初に務めた「ビームスストリート 梅田」で先輩たちからお酒に関する薫陶を受ける。取材時も「今日も飲みに行きます!!!」と満面の笑みで応えてくれた、大の酒好き。お父さんはふぐの免許を、お母さんが調理師免許を持っており、自身も料理が好きで自炊を欠かさない。今回のレシピは、お母さんに日本酒に合うレシピを相談ところ「なめろうって味噌メインみたいな感じになるとおもうけど、これは日本酒をつかったレシピやねん」と教えてもらったもの。ちなみに、松下さんとって「チャプチェ」のレシピを紹介してくれた山下さんは大先輩であり、「関西で一番お酒がつよいひと(笑)」。
/ アジのなめろう
【材料】
味噌150g
みりん大さじ1.5
砂糖大さじ1/2
日本酒大さじ2
お刺身用のアジ適量
大葉5枚
茗荷1個
梅干し2個
【作り方】
調味料を全て混ぜる。
混ぜた調味料を弱火にかけ、ゆっくりかき混ぜながら煮立たせる。
少し冷ます。その間に薬味を全て微塵切りする。
冷ました味噌と薬味、アジを合わせて完成。(冷蔵保存で7日保ちます^^)
➡冷奴に乗せたり、納豆と混ぜたり、on白米もオススメです!!
よく見るなめろうは、包丁で叩いていますが、あえてザクザク切って、触感を残してあげて!
生原酒ボトル缶は、カップ酒とは異なる魅力がありました。それは、キャンプでの熱燗。「家だけではなく、むしろ屋外でも飲むのにいいんです」とは日本盛のキャンプマスターである合六さん。さて、その理由とは?
合六 享さん
日本盛に勤務して16年目。会社いちのアウトドア好きで、キャンプ歴は10年。日本酒にこだわらずお酒全般が好きで、旅先で地酒を飲むのもたのしみのひとつ。
「基本的に熱燗が好きなので、キャンプに行ったときも熱燗ですね」という合六さん。ボトル缶の登場以前から、日本盛にこだわらず、ご当地のカップ酒を焚き火で温めて飲んでいたそう。「カップ酒ってデザインもいろいろあるので、お土産代わりになるんです」とのことだが、いまではボトル缶の出番が多めに。その理由は「カップ酒は蓋ができないので、飲みきらないといけないでしょ。ボトル缶ならリキャップできるし、軽くて割れる心配もない」からだとか。ちなみに、キャンパーの間ではボトル缶で熱燗をつくるのが定番のようで、合六さんもキャンプサイトで日本盛のボトル缶を持っているキャンパーを見かけたことも。キャンプや釣りなどのアウトドアと生原酒ボトル缶、相性バツグンです!
日本盛とビームス ジャパンが作ったスペシャルパッケージの日本酒。そのビジュアルを描いてくれたのが、イラストレーターの白根ゆたんぽさん。どんな思いから、あのデザインは生まれたのか。その秘話を聞きました。
佐野 明政(以下、佐野):ゆたんぽさんは普段から、お酒自体は飲まれます?
白根 ゆたんぽ(以下、ゆたんぽ):割と飲む……というか、飲みすぎるというか(笑)
佐野:このキャラクターに名前はないんですよね?
ゆたんぽ:なんとなく裏のストーリーみたいなのを考えるときはあるんですけど、普段から名前とかキャラクター設定まではしていないですね。
佐野:第一弾のボトルは「にほんしゅき」という文字周りのデザインも含めて、手掛けていただきました。
ゆたんぽ:既存のロゴ以外は割と自由にして良いというお話しだったので、それで「にほんしゅき」の文字も含めてデザインをさせていただきました。
佐野:イラストとあわせて、文字もいろいろパターンを出してもらって。
ゆたんぽ:それを皆さんの話を聞きながら詰めていって。ぼく、普段は割とセクシーな絵を描いていたりもするんですけど、その分そこら辺のブレー キを一番踏む役でもあるんですよ。打ち合わせとかでも、「描くときにただ一つ条件がありまして、あんまりセクシーすぎるのは ......」みたいなことを言われるんですけど、それは十分わかっていますと(笑)
佐野:たしかに、広報の方が「(セクシーなイラストは)社長に隠していました」と冗談めかしておっしゃっていました。ぼくらとしては、日本酒に馴染みのない20代、30代の方に訴求するためには、ゆたんぽさんのイラストがピッタリだろうという提案でした。
ゆたんぽ:「にほんしゅき」というコピーにハートが入ることが決まっていたけど、これは活字で見るとちょっと強いんですよね。なので、商品を送り出す側だけがはしゃいでいる感じにならないよう「ハートのなかに顔を入れましょう」と提案したり。
佐野:お酒は商材としてセンシティブにならざるを得ないところもある中で、いろいろと指摘をいただいてビームスはもちろん、日本盛さんサイドも想像していなかったリスクヘッジにハッとさせられることもありました。今回、グッズデザインやポップアップの内装まで、ボトル以外にもつくるものが多かったですよね。
ゆたんぽ:内装も楽しかったですね。一人の作家の絵で、さらに配置までやらせてもらえたので。猫を勝手に配置したりしました(笑)
佐野:たしかに! いっぱい、いましたよね。
ゆたんぽ:一応、立ち位置によって猫が複数匹に見えないように工夫していて。家の中で1匹の猫がいるという想定です。配置した要素は『BEAMS AT HOME』をみながら、ビームススタッフの部屋をイメージしているところもあります。
佐野:ムービーでも、スタッフが自宅で日本盛さんのお酒を飲みながらそれぞれの趣味を披露しているんです。日本酒って特別な時に飲むイメージになっていますけど、もっと普段づかいしてもらいたい。ちなみに、ゆたんぽさんのお友達から反応はありましたか?
ゆたんぽ:ボトルがかわいいからって、飲み友達がビームスに行って買ってくれました。あと、釣りをする友達が「これ、 知ってるよ。ポケットに入れてちょっとづつ飲みながら釣りができるからいいんだよね」みたいに言っていましたね。
佐野:ぼくも家に持って帰った時に、妻から「かわいい。友達にプレゼントしたい」と言われました。お客さまからも「かわいい、かわいい」って、本当にボトルひとつで日本酒に対するイメージが変わるというか、ゆたんぽさんにデザインしていただいて本当によかったなと実感しました。
ゆたんぽ:ありがとうございます。それは嬉しいですね。
佐野:第二弾(本醸造、大吟醸)はボトルキャップにもイラストが入っていて。このキャップが、またすごくかわいいんです。
ゆたんぽ:思いつきで入れたら、うまく入るぞということで採用いただいて。
佐野:飲みニケーションじゃないですけど、「パッケージがかわいいから、誰かに渡したい」という新たなコミュニケーションも生まれました。友達の家に遊びに行く時の差し入れに持っていく。そういうコミュニケーションの仕方が生まれるというのが日本盛さんも新鮮だし、すごい発見だなと言っていたんですよ。
ゆたんぽ:ボトル自体が小さいから、そのまま飾ってもいいですしね。ぼくのイラストが日本酒を知るきっかけになったら嬉しいですね
オリンピアンの日本盛社長のことは
大リスペクト!