FEATURE

2021.06.11

長くそばにある服は デザインだけでなく 作り手の考え方にも惹かれるもの

地球に、人に、動物に優しいことを聞くとなんだか壮大で難しそうに感じてしまうし、建前だけじゃ続かない。
でも、ワクワクを諦めたくない私たちにだってほんの少し視点の切り替えをするだけでできる何かはきっとあるはず。
そんな“つづく”のリアルなヒントをBEAMSスタッフの日常から切り取る連載企画。
今回登場するのはInternational Gallery BEAMS ディレクター・バイヤーの片桐恵利佳。社内でもエシカルな意識が高いと評判の高い彼女の日常を覗きます。

Monday


毎日飲むコーヒーは、いくつかの決まったお店の中から必ず調達しています。お店の共通点はシングルオリジン(※)の豆をたくさん置いていること。生産者がはっきりと分かる安心感もありますが、厳しい条件の中でも丁寧に美味しいコーヒー豆を作ってくれる人たちを応援したい、少しでも賃金が回って欲しいという想いがあるのもシングルオリジンのコーヒーを選ぶ理由のひとつ。同じような理由で野菜もなるべくオーガニックのものを選び、空輸していない地元野菜を買うように心がけています。こんな考え方に大きくシフトしたのは、東日本大震災がきっかけ。手軽に買える安いものもあるけれど、大人になった今は少しくらいプラスアルファのお金を払っても、きちんと納得して選んで、自然と共存しながら生きたいなと思います。

※シングルオリジン
国や地域だけでざっくりとカテゴライズして豆を混ぜられてしまうものと違い、農園や生産者、品種、精製方法など細かな単位で銘柄を分けられ販売されるコーヒーのこと。味の個性などだけでなく、産地のストーリーや生産者の顔がみえることや、作り手側へ正当な対価を付けられるのが魅力。

 

デニムワンピース/Cristaseya
Tシャツ/古着バッグ/The Row
ブーツ/CELINE
ネックレス、リング/SOPHIE BUHAI

 

Wednesday



何を買うにも慎重によく吟味するようになったことは、ディレクターを務めているこのお店International Gallery BEAMSにも少しずつ反映されているように思います。何も持たないことがサステナブルという考え方もあるけれど、やっぱりファッションが好きということを諦めたくない。それなら長く着られる、つけていられるものの基準をネームバリューなどではなく、自分なりの視点で持つことが大切なのでは?と考えています。だからこそ、ブランドのアイデンティティやデザイナーの考え方を丁寧にすくい取り、その情報や洋服の良さをきちんと紹介するのはセレクトショップの役割のひとつ。見た目にも背景にも魅力を感じて全てを一緒に纏っている感覚を体験できたものは、短命で終わらずずっと自分の元に置いておきたくなるアイテムになると信じているんです。


トップス/The Row
スカート/WALES BONNER
シューズ/Martiniano
ピアス/MHT
リング/SOPHIE BUHAI


Friday



買い付けはこうしてオンラインで。実際に会って話を聞いたり手にしたりできないもどかしさはありますが、可愛いからなんとなくいい、という時代ではなくなった今、生産背景や作り手のストーリーもしっかり聞くことがとても大切。例えば、リアルファーやピュアカシミア、シルク、ダウンなど慎重になる素材たち。それを扱うブランドの中には、きちんと問題に向き合い、エシカルな考えのもとでものづくりをすることもあります。だから、この素材はダメとただ否定するのではなく、作り手に賛同できるものであれば是非その魅力を紹介したい。ただ、極力無駄をなくすために量は抑えて仕入れるように心がけています。他にもファッション界を取り巻く様々な環境問題や社会問題について、どうするのがより良いのかいつも頭を悩ませています。すべてを一気に、ということは難しくても、解決させるきっかけづくりをしていくことは、この仕事に携わっている以上ひとつの使命のような気がしています。


ジャケット/VIKA GAZINSKAYA
シャツ/Meryll Rogge
デニムパンツ/Levi’s 505 vintage
シューズ/Manolo Blahnik
スカーフ/CHANEL vintage
ピアス、リング/MHT


Saturday


高校生の時から古着が好きで今でも週末など時間が空くと古着屋さんをのぞきに行きます。特にデニムパンツは環境汚染のこともあって買い付け量を減らしているのですが、私自身も新しいものではなく古着屋さんから新調しています。もちろん、環境のことだけでなく、古着の方が欲しいシルエットや風合いに出会えるのも事実。今はメンズサイズの古着を穿くのが気分です。古着の服は好きだけど、古いものは”今の時代のもの”とかけ合わせるから素敵なスタイルに見える。だからファッションを楽しみたい私は新しい服を買わないという選択肢はありません。ただ、その”今の時代のもの”を買うとき、デザインなど見た目と同時に、環境に配慮していると感じるものを手にとることが私にとっては自然なこととなってきている気がします。最近このバッグを購入したのですが、レザーではなく、カゴバッグに目が向いたのもそんなムードの表れのひとつかもしれません。


トップス/古着
エコレザースカート/VIKA GAZINSKAYA
シューズ/Manolo Blahnik
ピアス、リング/MHT
ネックレス/SOPHIE BILLE BRAHE
バッグ/sophie digard


Sunday


人や動物のことをよく考えて生活するようになったきっかけの一つが、10年ほど前から参加し始めた保護猫の支援活動。化粧品などについては元々オーガニックのものを好んで使っていたのですが、悲惨な動物実験の事実を知って、一層本当にこれを買っていいのか、とよく吟味するようになりました。必ず商品に記載されているマークの表示をチェックしてから購入するのが日課です。


片桐さんが毎日使っている愛用品たち。
左から
トゥースペースト/made of Organics ホワイトニングトゥースペースト
バーム/NEAL’S YARD REMEDIES ワイルドローズビューティバーム
化粧水/do organic エクストラクトローション モイスト
フレグランスオイル/OLO fragrance PALO SANTO
美容液/Trilogy Cブースター トリートメント


これからの私の”つづく”

今の仕事のこと以外で言えば、ゆくゆくは犬や猫などを助けることも仕事にしていきたいと考えています。今も猫の保護活動を少しお手伝いすることがあるのですが、現状はとても過酷。人間だけでなく動物にとっても快適な環境づくりを目指したいですね。


Erika’s recommendation list

ONIBUS COFFEE
行きつけのコーヒーショップのひとつ。コーヒーの抽出後に出るコーヒーカスを使った石鹸を作って販売し、その売り上げの一部をコーヒー豆の生産者に還元する活動をしたり、最近ではコーヒー豆の袋をコンポスタブル素材にしたりと、その取り組みにはいつも感銘を受けています。
http://www.onibuscoffee.com

動物病院院長の服部真澄さん
動物保護や環境問題に関する情報を積極的に発信している方がいることを知ってからは、得意ではなかったInstagramが私の毎日の選択に影響を与える貴重な情報源のひとつになりました。癒される可愛い犬猫写真の合間に、クルエルティフリーの化粧品やアニマルフリーのダウンなど大切な情報を教えてくださる動物病院院長の服部真澄さんのアカウントは毎日チェックしています。
https://www.instagram.com/hattorimasumi/

つながる募金
毎日仕事をしていると具体的な取り組みや活動に参加することが難しいもどかしさの中で、何か少しでも人や環境に貢献できることはないかと探して辿り着いたのがこの募金。リストから毎月いくつかの支援団体を選んで寄付しています。ソフトバンクの運営ですが、違うキャリアの利用者でも気軽に小額から参加できるのでおすすめです。
https://www.softbank.jp/mobile/service/tsunagaru-bokin/

PROFILE

  • 片桐恵利佳 / Erika KatagiriInternational Gallery BEAMS ウィメンズ ディレクター・バイヤー

    千葉県出身。BEAMS RECORDSやInternational Gallery BEAMSでのショップ経験を経て、2018年バイヤーに。現在はInternational Gallery BEAMSのウィメンズディレクターとして国内外の新進気鋭ブランドを紹介。海外出張が無くなった現在は、趣味の散歩に拍車がかかり、休日になるとフィルムカメラを持ち、街歩きをする日々を楽しんでいる。

Photo:Shota Kikuchi Direction:Takako Shirasawa