FEATURE

2021.08.12

“服のカスタマイズは家と同じ。
好きな部分をいかしながら
変えていけばずっと愛し続けられる”

地球に、人に、動物に優しいことを聞くとなんだか壮大で難しそうに感じてしまうし、建前だけじゃ続かない。
でも、ワクワクを諦めたくない私たちにだってほんの少し視点の切り替えをするだけでできる何かはきっとあるはず。
そんな“つづく”のリアルなヒントをBEAMSスタッフの日常から切り取る連載企画。
今回登場するのは、ビームス 二子玉川スタッフ荒瀬和雄。飽きたり着られなくなったりしたら大胆に手を加え、ひとつのアイテムを10年以上使い続けるのは当たり前。”サステナ先生”という異名も持つ彼のカスタマイズ術からヒントを得ます。

 

「ボタン付けなど自分の服の簡単な直しは学生時代から自分でしていたので、服のカスタマイズはインテリアの模様替えと同じくらいに普通の感覚。今住んでいる家もそうなのですが、建物の好きな雰囲気を活かしながら、ダメな部分や飽きた部分は変える。使えるところは使う。アップサイクルをしていくのはどんな持ち物も当たり前のことのように感じています。気に入って買った服も形や雰囲気が変わるとまたその魅力を改めて感じて一層好きになるので、いつの間にかどの服とも長い付き合いになっています」

 

 <idea1>
シンプル服に飽きたら…
ボタン替え

「13年前くらいに購入したニットジャケット。そのシンプルさに飽き始めて、ボタンを全て変えました。ベーシックな服の印象を最も手軽に変えられるので、セルフカスタマイズ初心者の方にもおすすめの方法だと思います。ただ、僕の場合は理想のヴィンテージボタンを追求しすぎてしまい、最終的に完成したのは構想から2,3年ほど経ってから。国内のヴィンテージショップはもちろん、ebayなど海外のサイトも長い時間をかけてくまなくチェックして状態の良い好みのものを少しずつ集めました。時間をかけすぎた感はありますが、その分愛着も増しています」

カスタマイズしたジャケット/margers

 

 <idea2>
きれいめに飽きたら…
洗濯機洗い

「もちろんブランドは推奨していないのですが、僕を含めて周りのスタッフもよくやっているのが洗濯機洗い。スーツやジャケットなどきれいめの服で、少し形が古くなってきたな、とか思い切り着こんだ感じに変えたいな、なんて思ったら、迷わずお湯で洗います。この麻のジャケットは肩パッドを抜いてから洗濯機に入れ40度くらいのお湯で洗いを。テーラード感がなくなってこなれた雰囲気になり、サラッと肩肘張らずに着られるようになりました。パンツは、ウールでデニムパンツみたいにこなれたものが欲しくて、手持ちのものやってみようとトライ。洗ったらすぐに伸ばして干すとはいえ、もちろん少しは縮むし風合いも変わるので最終型は仕上がってみないと分からない部分もあり、覚悟はいります。でももう着なくなってしまっているものなら、手放してしまう前にこうして新鮮なアイテムに変身させてみるのも選択肢としてはアリじゃないでしょうか」

洗濯機洗いしたジャケット/BEAMS F
洗濯機洗いしたパンツ/REM

 

 

 <idea3>
白い服の汚れが目立ってきたら…
スプレー染め

「これは15年くらい前のものかな。白いパンツって気をつけているつもりでも絶対に汚れてしまうんですよね。このコーデュロイのパンツもやっぱりいつの間にか汚してしまい、生地感は好きでまだ気に入っていたのでどうしようかなと思っていたタイミングに、染めQというスプレーの存在を知りました。均一にというのは難しそうなので吊るしながら敢えてムラになるようにランダムにスプレーしてみたら、雰囲気が出て思っていたより良い仕上がりになりましたね。手軽さも気に入って、その後タンの色だったレザーの靴も同じスプレーで金具も含めて黒くしてみました。あまり風合いも変わらず、色落ちも感じていないので気に入っているカスタマイズ方法です」

スプレー染めしたパンツ/International Gallery BEAMS
スプレー染めした靴/KD

 

 

 <idea4>
色物が褪せてきたら…
漂白剤かけ

「10年くらい前に購入したシャツの襟の色が褪せてきたので思い切ってキッチンハイターの原液をかけてみました。他の方法にも言えることなのですが、この”思い切り”というのがカスタマイズにはとても大切。捨ててしまうよりマシなので、遠慮せず大胆にした方が上手くいくと経験上感じています。このシャツも、生地をいためるのでは?という不安も一瞬よぎりましたが、結果は問題なし。原液をかけたらすぐに水で流し、洗濯機で洗って待つだけ。想像とは違う色になっていましたが、味が出て気に入っています。」

襟を漂白したシャツ/DENIS SIMACHËV

 

 <idea5>
着なくなってしまったものは…
アイテムの合体

「自分でカスタマイズする、という意味では正直全くおすすめできない一例としてご紹介します。形が好みではなくなってしまい、着ることのなくなったレザーのブルゾンに、ペンドルトンのブランケットを合体させてみよう!とある日急に思い立ってしまったんです。すぐにブランケットを買って、ベルト直し用に使っていた手持ちの革用の糸と針で縫い始めました。最初はとても楽しかったんですが、生地がどちらも分厚いし硬いしで、針を刺すのがとにかく大変で…段々ツラくなっていって、最後は修行のようでした…(苦笑) ただ、出来上がって着てみたらすごく温かくて、ペンドルトンってすごいんだなと改めて思いましたね(笑) パンツの方はいらなくなった軍パンのポケットをデニムに。こういうデザインのものが欲しくてかなり探したのですが見つからず、最終的に自分で作りました。敢えて馴染みすぎない色の糸を選び、ブランケットステッチでクラフトっぽく仕上げています」

ブランケットとブルゾン/Pendlton、Quattrocchi
ポケットをつけたデニムパンツ/Levi’s 501

 

これからの私の”つづく”

ビームス工房のメニューを増やしてカスタムや改造の新しいご提案をどんどんしていきたいです。洋服の黒染めや靴紐のオンデマンド作成、その先はインディゴ染めなんかも出来たら良いなあと。プライベートでは屋上を有効活用しようと思っていて、野菜やハーブを作ろうと思っています。娘が園芸部なので、教えてもらおうかな。

 

 

Arase’s recommendation list

ecover

家族が匂いに敏感なこともあって、香りの強い洗剤が多い中やっと辿り着いたのがこの洗剤。頑固な汚れや匂いも落ちるのに無臭で、さらには環境にも優しいということで、食器用洗剤も合わせてもう4~5年使っています。また洗濯に関しては、自宅の洗濯機がお湯洗い出来る機種なので、なるべくお湯で洗うというのもポイントです。

https://www.ecover.co.jp

 

ハッピー ケアメンテ(クリーニング)

実は生地がいたむのであまりクリーニングに出しすぎないというのが服を長くそのまま着るための秘訣なのですが、こちらは別。ビームスとしてもお付き合いのある信頼できるクリーニング屋さんです。最初に採寸してから水ベースで洗ってくれて綺麗になる上に風合いが蘇ることも多く、状態が悪くなって戻ってきたと思うことがないのが嬉しいところ。ビームスで購入していただいたものはビームス経由でも出すことができます。

http://www.kyoto-happy.co.jp

 

ビームス工房

「ビームスでは初のお直し専門店がこの春にオープンし、僕も週に1度のペースでこちらのお店に立っています。修理はもちろん、リメイク・カスタムといったことを幅広くご提案させていただいている場所なので、ただのお直し屋さんとは違った面白さもあると思います。僕が修行のように頑張ったアイテムの合体のようなことも、自分の手を煩わすことなくツラい思いもせずに実現できるかもしれません(笑)。 使わなくなったパンツも、これと同じシルエットにと気に入っているパンツと共にお持ちいただければ、全く一緒にはならなくとも、近いものに仕上がると思います。曜日によって担当者が違い、指名もできるのでまずはぜひHPをチェックしてみてください。LINEでもご相談を受け付けていますのでお気軽にご活用いただけると嬉しいです。」

※「ビームス工房」は改装のため、8月16日(月)をもちまして一時休業いたします。オープンは10月上旬を予定しております。

https://www.beams.co.jp/shop/bkoubou/

 

PROFILE

  • 荒瀬和雄/Kazuo Araseビームス 二子玉川 / ビームス工房 スタッフ

    1975年東京都生まれ。中学生1年の時に兄の影響で洋楽のバンドを聴くようになり、そこからファッションに目覚める。大学3年からバイトでビームスに入社し、卒業と同時に社員に。原宿、大宮、新宿など数々のお店を渡り歩き、現在はビームス 二子玉川のメンズドレスフロアに在籍する傍ら週に1度ビームス工房の店頭にも立ち、お客様からのお困りごと解決に精を出す。最近の趣味は、ナチュラルワインやDIY。嫁と中学3年生の娘、保護ネコの”ポン”とともに暮らしている。

Photo:Osami Watanabe Direction:Takako Shirasawa