REPORT

FEATURE

2023.11.21

“つづく”をテーマに
想いをつなぐ
「モノを売らないお店」

「つづく服。」の発足から早2年。これまでのウェブサイトでの発信から一歩進み、「つづく服。」としては初となる店舗企画「モノを売らないお店」を2023年10月20日(金)〜10月22日(日)の期間限定で、原宿の「JOINT AROUND the CORNER」にオープン。連日オープン前には列ができるほど大盛況の中、約260名のお客様により約1,200点のアイテムの交換が行われました。“ファッションを愛している”という共通の想いを持った方々が、“つづく”をテーマにモノとモノ、モノに込められた持ち主の想いやストーリーを交換し楽しく語らい、“人と人”が繋がるきっかけともなった「モノを売らないお店」の様子をお伝えします。

 

「モノを売らないお店」は2つのブースに分かれて展開されました。ひとつは、入り口手前に設けられた、モノと共に持ち主の想いやストーリーを交換する「ストーリー交換ブース」。そしてもうひとつは、衣料品回収サービスにご協力いただくことで、ビームスの経年在庫や経年備品などから好きなものと交換いただける「再循環ブース」。全体を通してもののライフサイクルや自分にできる選択肢を見つめ直してほしい、そんな想いを込めた仕組みづくりです。

 

「ストーリー交換ブース」

大切にしてきたモノと想いを交換するブース。ビームスのスタッフ約40名に加え、「つづく服。」に共感したクリエイター7名の長年愛用したものや、思い出が詰まったもの、決意のきっかけになったものなどストーリーを持ったアイテムがその想いの書かれたメッセージタグと共に並べられました。参加者も同様に出品するモノへの想いをメッセージタグに書き、他の出品者の想いを読みながら交換したいモノを選びます。自分の想いが詰まったメッセージはまた別の誰かに読まれ、これまで自分と共に時を刻んできたモノは、新たな持ち主とのストーリーが。

交換できるモノには持ち寄られた服だけでなく、BEAMSのスタッフが個人のスキルや趣味を活かして働いているお店や、制作・販売しているブランドのアイテムなども出品されました。

 

「再循環ブース」

着られなくなった衣料品をお持ち込みいただくブース。代わりにビームスの経年在庫や店舗の店舗装飾品など、商品として販売予定のないものたちから好きなものと交換できる仕組みです。ここで回収した衣料品は、2022年からビームス一部店舗で実施しているBRING™の衣料品回収サービスを通じ、素材に応じてリユース・リサイクルされます。

このイベントに先立ち、ビームスの都内3店舗で事前回収も実施。設置した回収ボックスへ衣料品を持ち込まれた方には、「モノを売らないお店」の「再循環ブース」でご利用いただけるチケットを配布しました。今回の事前回収で集まった衣料品は約670着。チケットをお渡しした方々全員が「モノを売らないお店」へ来店してくださいました。

 

 

Visitor’s voice

たくさんのストーリーが生まれた今回のイベント。来場された方にお話をお聞きしました。

 

前日に偶然ウェブニュースの記事を目にし、家族と来場したファミリー。奥さまが昔お気に入りで穿いていたチェックのスカートや、お子さまの記念すべき人生初のデニムアイテムなどを持ってきてくださいました。その中にはご主人の誕生日に奥さまが贈ってくれて大切に着ていたというダウンも。思い出が詰まったあまりなかなか手放せないでいたけれど、来店前に奥さんと相談し決心をして、大切に着てくださる誰かへお譲りすることに。

 

「物々交換っていつかしてみたいって元々興味があったんです。今回参加してみて、みんなそれぞれの想いが集まっていて、タグのメッセージを読むのも楽しかったですね。普段子育てで気が回らないお花と交換できたのも嬉しかった。娘が手作りのピンを気に入ってすぐ着けたいと言って。夫も娘もとても楽しんでくれていたので家族で来てよかったです」

 

 

元々アパレル関係の仕事をしていて服が好きで、サステナブルなことにも興味があったというお客様。赴任先だった場所を気に入り、仕事を辞めて住むことにして色々なことにチャレンジしていた期間、制服のようにいつも愛用していロンTを持参してくださいました。これを着るとバイタリティが溢れてくるという想いのこもったTシャツと交換することにしたのは、英国紳士のプリントが可愛いTシャツ。

 

「『言葉にし難いけれど気に入って購入した』という、ファッションを楽しんでいる様子が伝わるようなメッセージに惹かれてこれを手に取りました。そうしたら、『それ僕が持ってきたものなんです』とスタッフさんが話しかけてくれて。Tシャツにもスタッフさんにも会えて嬉しかったです。

自分の想いが詰まった物を持ってきて、それをまた誰かの想いが詰まったものと交換できて、素敵な取り組みだと思いました。リサイクルとかよくあるけど、なかなか物に対する想いまでは伝わりにくいですよね。こうやってタグにメッセージを書いて、想いまで含めて交換できるってすごくいいですね」

 

 

 

Staff’s voice

大好きなファッションを日々楽しむBEAMSスタッフからも、エピソードと共にお客様へつづけたい、たくさんのアイテムが出品されました。

 

 

宣伝課 稲垣文彦さん

「毎シーズン購入してきた愛用ブランド、〈2-tacsのシャツ〉。鮮やかなカラーに惹かれて買ったのですが自分にはしっくりこなくて、いつか似合うようになる時が来ると思って持ち続けていたのですが、あの手に取った時のワクワクを胸にしまったままずっと着ずにいるのも勿体無いなと今回思い切って出品しました。ビビッときてくれる人が男女問わず、想いを受け継いでくれたら嬉しいなと思います。今回当日の運営スタッフとしても参加しているのですが、BEAMSの店舗ならいつも6割くらいが男性のお客様なのに対し、このイベントは7〜8割が女性だったのは印象的でしたね。こういう取り組みしてるのっていいですね、と声をかけてくれる方が多くて嬉しかったです。お金の価値と違って、物の価値って人それぞれ。自分にとってはもう着られなくなってしまったモノでも、ある人にとってはまた、すごく大事なモノになることがたくさんあると改めて認識しました」

 

 

デジタル部 加藤蘭さん

「デザインも可愛いものをと手作りするようになった犬の服を出品しました。いつも生地が余らないように工夫したり、シーズンごとではなく通年通して着用できるようなアイテムを作るように心がけたりと新たに作るものにも無駄がないように心がけています。サステナブルには関心があったんです。でもなかなか行動に移せる機会がありませんでした。今回「モノを売らないお店」に参加して、実際にお客様とのコミュニケーションを通して、自分ごととして楽しむことができてよかったです

 

Interview

 

 

今回の企画について、責任者の桑原さん、運営チームの渡邊さん、前田さんに話を聞いてみました。

 

―今回の企画はどのような経緯で行うことに決まったのですか?

桑原 これまで、「つづく服。」はウェブサイトでの発信をメインに取り組み続けてきました。でも「つづく服。の日」の記念日制定から2周年を迎えるにあたり、双方向のコミュニケーションを取れるようにしていきたいし、それは私たちが今後、消費者目線でお客様と共に何ができるか考えることに繋がるのではと考え、プロジェクトとして初めてリアルなコミュニケーションが叶う「モノを売らないお店」を開催することにしました。

 

―モノを売らない店、というコンセプトはとてもキャッチーでしたね

桑原 実は1年前くらいから、「つづく服。」というからには、「“売る”以外の選択肢の一つとして“誰かに繋げていく”ということを考えられるような企画をしたいね」と話していたんです。でもそれは“もったいないからやる”のではなく、“服が好きだからこそ、もっと楽しむためにやる”という視点が軸にありました。だからこそ、単にいらなくなったものを誰かに譲るというだけではなく、“想いを交換する”ことにこだわっているんです。

 

―お客様の反応はいかがでしたか?

桑原 事前にBEAMSの3店舗で衣料品回収を行なったのですが、まずそこでの反応が思ったよりも大きかったんです。これまでのイベントと比べても異例なほど問い合わせが多く、わざわざ店舗に足を運んでくださって「興味があるので教えてください」というお客様も多くいらっしゃいました。

 

前田 会場で交換のための誓約書を書いてもらったり、想いを書いてもらったり…とお客様にしていただかなければならない工程が多かったのが心配だったんです。でも「大事にしてきたモノを、大切に扱ってもらえることが伝わってきた」と言ってもらえることが多くて、私たちの想いを受け止めてくださっていると感じ、本当に嬉しかったですね。

 

渡邊 自分のお孫さんに何かプレゼントしたいと、自分の想いのつまったモノと交換しにきてくださった方がいらっしゃったんです。お金で買うのとはまた違った贈り物という意味でも、年齢や性別を超えた人と人との繋がりがこの場所で生まれているという意味でも、この企画をやってよかったという実感が湧きました。

 

―BEAMSスタッフからの反響も大きかったそうですね

渡邊 「この企画をするよ」と声をかけたときに、興味を持ってくれるスタッフが予想以上に多く、アイテムを出品してくれたり、店舗に立ってくれたり、お店に立ち寄ってくれたりとたくさん協力してくれました。お客様はもちろん、服が大好きなBEAMSスタッフたちにも、こういった企画をきっかけに改めて服のライフサイクルを考えてもらえたんじゃないかなと思います。

 

―今後の展望はありますか?

桑原 初めての企画で大変な部分も多かったですが、私たちの想いが、お客様へ、そしてその周りの方々へとどんどん広がっていくような、そんな可能性を「モノを売らないお店」で感じました。今後もお客様との接点を増やし、ファッションを愛するもの同士が一緒になって考えられるようなコミュニティを企画したいですね。

 

前田 「つづく服。」への自分たちの想いをきちんと伝えることはそう簡単ではないと思っていたのですが、この企画でたくさんの反響を得られて、皆さんと想いを共有できるということに感動を覚えました。服を持ちこんだお客様に「これかっこいい!これ俺が欲しいかも!」と服好きなBEAMSスタッフが話しかけるなど、会話が盛り上がっていたのもとても印象的で。服を通じたコミュニケーションをもっともっと生み出せるような取り組みを、今後もやっていきたいです。

PROFILE

  • 左から、渡邊・桑原・前田「つづく服。」プロジェクト 兼 「モノを売らないお店」運営メンバー

    桑原
    岐阜県大垣市出身。大学卒業後、スタイリストのアシスタントを経て2015年にビームスに入社。店舗スタッフ、プレスを経験し、現在は企業の宣伝・プロモーションを担当。食べることとお酒が大好きで、趣味は料理と飲み歩き。特技は幼少期から続けていた書道。

     

    渡邊
    入社5年目。3年の店舗スタッフを経て宣伝課へ。趣味は映画鑑賞とコンテンポラリーダンスを観たり踊ったりすること。程々のお酒を楽しみます。

     

    前田
    兵庫県出身。2020年コロナ禍の入社同時にビームス 大宮へ配属後、イベント課を経て現在は宣伝課へ。音楽やアート、文化の繋がりにを深堀りするのが好きで、特にNeo Soulや90s R&Bに傾向してます。

Photo:Kazuhiro Fukumoto〈TAKMI〉Direction:Takako Shirasawa Assistant direction:Yuri Tomita