FEATURE

2024.02.16

無理なく身の回りで
好きなモノを追求すれば
「つづく」スタイルが日常へ

地球に、人に、動物に優しいことを、と言われるとなんだか壮大で難しそうだし、建前だけじゃ続かない。
でも、ワクワクを諦めたくない私たちにだってほんの少し視点の切り替えをするだけでできる何かはきっとあるはず。
そんな“つづく”のリアルなヒントをBEAMSスタッフの日常から切り取る連載企画。
今回登場するのは〈BEAMS Planets(ビームス プラネッツ)〉でマーチャンダイザーを担当している小野正史。
マクラメ作家としても活躍している彼の視点から垣間見える日常の愉しみ方を覗きます。

 

「きっかけはシンプルに、マクラメが欲しいと思ったことなんです。でも実際買おうと思うと、どれも手に取りやすい価格帯ではない上に、日本の家事情では大きすぎるサイズ感のものばかり。もっと手頃に家に迎え入れられるマクラメがあれば、と自分用に最初は見よう見まねで始め、段々と作れるものが増えていきました。それがいつしか、知り合いなどを通じて口コミで広まり、BEAMSの野外イベントや店でも置いてもらうように。一時期は年間30から40くらい作っていたこともありましたね。ロープはもちろん、石や流木、動物の骨、ツノなど材料はすべて自然のもの。旅先で拾い集めたものを使うことも多いです。惹かれるものが自然のものということもありますが、流行り廃りがあるものだと思うので、捨てられても環境負荷がないようにしたいとも考えています。金額についても、他のマクラメと比べてとても手頃だと驚かれることがありますが、アーティストとして私自身の名前を立たせるのではなく、あくまで作品を気軽に手に取ってほしいという気持ちは本格的に始めた7、8年前からずっと変わらないです」

トップス/HOUDINI
パンツ/HOUDINI
帽子/HOUDINI

 

 

「作り始めた頃は素人の自分が作ったものにお金を出していただく、ということに気が引けたのですが、買っていただいた方から喜びの言葉をいただくと素直に嬉しいんですよね。他のアーティストの方とコラボレーションも楽しいですし。今は小さいものなら半日、大掛かりなものは半月かけて、年間10から20くらいを楽しみながら制作しています」

 

 

「マクラメ制作のために編み方を研究したり、イベントで他の作家さんと触れ合ったりしていくうち、日本の古い民藝に興味がわくようになりました。元々収集癖があるのですが、今は家に壺や食器、しめ縄、もう作り手がいなくなってしまった農機具など、様々な民藝品を飾っていて、家を訪れた友人たちには民芸館のようだと言われてしまうほどです。笑 マクラメは日本のものではありませんが、あくまで庶民が使うものであり、クラフトが作家の名前と紐づかないというところは自分のモノづくりに通じるなと感じています」

 

 

「『重要無形文化財』ともなっている大分県の『小鹿田焼』をとても気に入ってしまい、特に壺は買い漁っていたら20個ほど集まってしまいました。今となっては作り手がほぼいない大きなサイズの壺は手にいれるのが難しいのですが、それを幸運にもオークションで手にいれることができたときは本当に嬉しかったですね」

 

 

BEAMSのワークショップで作ったひのきのフラワーベース。家に遊びに来たtokunaga keiichiro.さんに描いてもらってスペシャルな逸品に。

 

 

壁には『雪ミノ』や荷物を背負う際の背中当てに使われる『ばんどり』など藁工芸品が。じっくりと眺めて編み込み方を研究することも。

 

 

「マクラメ制作をきっかけとして始めたのは、インテリアのコレクションだけではありません。例えば食べ物は、安く買えればいいという考え方は制作を始めたくらいからやめましたね。有機野菜できちんと作られているものにお金をだしたいと思っていた時、ちょうど教えてもらった「GOOD LIFE FARM」(https://www.instagram.com/goodlifefarm_tsukabox/)というお店の出雲の野菜がとても新鮮で。美味しい上に長持ちするんです。お店の子たちとまとめて月に2回ほど定期的にお取り寄せをしています。家ではほぼ自炊。決してケミカルなものを食べない、というわけではないのですがこうして身体にいいものを取り入れる時間も好きですね」

 

 

慣れた手つきでササッと料理をする小野さん。その脇には塩や砂糖を入れた『小鹿田焼』の小瓶が。

 

 

「冷蔵庫には野菜以外はこれしか入っていないというくらいハマっているのが自然酒を作られている福島の酒造、〈にいだしぜんしゅ〉のお酒。ここもマクラメを通じて知りました。友人を家に呼んだときには味比べと称してかなりの本数が空きますが、美味しくて二日酔いもなく日本酒はこれ以外飲めなくなってしまっています。実は料理酒もここのものを使わせてもらっているんですよ」

トップス/HOUDINI
パンツ/HOUDINI
帽子/ROTOTO

 

 

「プライベートでは山や海など外遊びをメインとしているので、そこで遊ばせてもらっている身としては自然環境に悪い影響があることをするのは失礼だなと思うようになり、気づけば日々の生活の中でも色々と気をつけるようになっていました。それは洋服への考え方も同じです。ここ数年は8割がたスウェーデンの〈HOUDINI(フーディニ)〉というブランドばかり着ています。僕は190センチ背があるので元々国内で選べる服が少なく、どうしてもアウトドアブランドになってしまうのですが、その中でも素材から自分たちで携わり、ナチュラルなもので環境負荷をほぼ出さないような服作りをしているこのブランドにとても共感しています。他にも環境負荷について取り組んでいる有名なブランドはありますが、僕はエコノミストではないので極端に意識が高すぎるものより、自分の感覚にちょうどいいブランドが心地いいですね」

 

 

「今、私も店舗スタッフとしてお店に立っている「ビームス プラネッツ リミテッドストア 下北沢」も実は、服だけでなく廃れつつある伝統工芸品を扱っています。また、日本のお酒やワイン、ジュースを出せるカウンターもあるんです。これまでそういったクラフトに興味のなかった人にも手にとってもらって興味を持ってもらえる一端となれたらいいなと考えています。自分自身が共感できるものを少しでも仕事でサポートできると思うと嬉しいですし、自分の強みが少しでも会社に還元できていると思えるのはとても幸せなこと。今後もそのような活動が続けられるといいなと思います」

トップス/古着 
帽子/MOUNTAIN RESEARCH

 

これからの私の”つづく”

生活の中で1番大切だなと思っている食に関わるという意味で、農業にいつか挑戦したいです。また、山遊びをよくするので、山の保全(登山道整備、植林)にも貢献していきたいですね。

 

Ono ‘s recommendation list

Senchi Designs

https://senchidesigns.com/

愛用しているアメリカのガレージブランド。ウェアには〈POLARTEC(ポーラテック)〉の Alpha®︎ Direct という保温性と通気性・蒸れを逃がす機能を備えた生地を使っている上、洗濯の際に流れるマイクロプラスチックを減らすために、商品には洗濯ネットになる付属袋(Senchi bag)を付けてくれるんです。

 

福島屋

https://www.fukushimaya.net/shop/

有機野菜や原材料、製造までこだわっている各地の食材、食品が取り揃えられていて、新しい発見が得られるお店で、気に入った商品を友人たちに紹介することも。コンセプトである「店頭に並ぶ食品から季節を感じることができ、食べて美味しくからだに優しい食材を吟味してセレクト」にも共感しています。

 

moonlight gear(アウトドアショップ)

Instagram:@moonlightgear_official

外遊びの話から環境への意識の向け方まで、様々な情報収集に。取り扱うアイテムも魅力的な物が多く自分の今のスタイルの元になっていると思います。倉庫の隣に畑を作ったり、一ヶ月雪山合宿で各地の雪山を楽しんだりと、「働く」ということを考えさせられる事も多い。 思ったことを即実践できるフットワークの軽さは自身の働き方の参考にさせてもらっています。

 

福田春美さん

Instagram:@haruhamiru

マクラメの制作を始めた頃に社内のスタッフを通じて紹介いただき、モノづくりを通じて北海道の魅力を教えていただいた方です。ライフスタイルに関する「ヒト、モノ、コト」の考え方も本当に参考になり、手掛けるプロジェクトも一つ一つ、人の繋がりを大切にされて取り組まれていて日々勉強させていただいています。春美さんを通じて普段の生活では出会えない方々と繋げていただいたことは自分にとってかけがえのないものとなっています。

PROFILE

  • Masafumi Ono 小野 正史〈BEAMS Planets〉 マーチャンダイザー

    千葉県出身。2002年、アルバイトスタッフとして入社後、物流と商品管理に20年間携わり、現在は〈BEAMS Planets〉を担当し、下北沢の店舗で扱うお酒のバイイングも行っている。2017年からはマクラメ編みの活動『Wood&Knot』を個人でスタート。趣味は山登り、スノーボード、キャンプなどアウトドア全般、クルマとバイク。自然の中で遊びながら、そこで見た風景、感じた感覚を作品づくりにも活かして楽しんでいる。

Photo:Osami Watanabe Direction:Takako Shirasawa