名物バイヤーが惚れ込んだ、中外陶園の招き猫

中外陶園

Maneki Neko

招き猫 × 鈴木修司 BEAMS JAPAN DIRECTOR

初めて見た時から
この猫の虜なもんで。

SELECTOR

鈴木 修司
(ビームス ジャパン ディレクター)

不安定な世相を反映してなのか、神社仏閣、パワースポット、縁起物に人が集まります。実際<ビームスジャパン>でも縁起物…中でも招き猫は大人気なのです。もともと日本人には馴染みの深い招き猫だけど、その歴史や言われ、ちゃんと知っておきたくないですか?
今回<ビームス ジャパン>ディレクターの鈴木修司が訪ねるのは、愛知県瀬戸市で、招き猫を作り続ける<中外陶園>。実はここ、<ビームス ジャパン>の別注招き猫を作っているところなのです。それでは参りましょう。鈴木修司がゆく、招き猫探訪へ!

HISTORY

中外陶園の年表

  1. 1952年 中外陶園創業
  2. 1987年 「薬師窯」の窯名で縁起物の製造を開始
  3. 2005年 招き猫ミュージアムをオープン
  4. 2016年 ビームス ジャパンとのコラボレーションが実現※それまでは干支の陶器がメインだったけれど、
    ここから招き猫に力をいれはじめる
  5. 2018年 経産大臣に「地域未来牽引企業」として
    選定される
  6. 2021年 鈴木康浩さんが代表取締役社長に就任

第一章 オレンジの招き猫の裏話。 Behind The Story Orange Maneki Neko

鈴木修司(以下、鈴木):
中外さん、本日もよろしくお願いします。

中外陶園(以下、中外):
こちらこそ、よろしくお願いします。

左が鈴木修司、右が<中外陶園>の若き代表である鈴木康浩さん。

鈴木:最初にお会いしたのは、<ビームス ジャパン>ができあがるほんの1年前くらいでしたかね。

中外:そうでしたね。

鈴木:僕もいろいろな招き猫を見てきましたけど、初めて<中外陶園>さんの招き猫を見た時、衝撃を受けたんです。猫背とか、絶妙にリアルな感じとかに一目惚れしてしまって。

中外:<ビームス ジャパン>との別注で作らせてもらっている招き猫の形は、鈴木さんにお会いする半年くらい前にようやくできたんです。僕が入社する前まではファンシーなデザインが多かったんですが、僕自身が惹かれたのはクラシックなもの。クラシックなものを今の職人が咀嚼したらどうなるのかということで作ったものを、鈴木さんにお見せしたら、すごくいい反応を見せてくださいましたよね。

鈴木:そんな手間と時間をかけて作った新商品を、すぐにBEAMSカラーの別注としてオレンジを作ってくださいと…。しかも、新宿の店舗「ビームス ジャパン」オープンの3、4ヶ月前というギリギリのタイミングでした。

中外:そのとき、鈴木さんは既に仕込みのバイイングは全て終了していましたよね(笑)。

鈴木:そうなんです(笑)。でも、どうしても取り扱わせていただきたくて。オープンまで時間がない中、要望をたくさん聞いていただきありがとうございました。蓋を開けてみたら、プレオープンで完売。オープンしても1年くらいは、予約の時点で売り切れで、店頭には並びませんでした。

歴代の<ビームス ジャパン>別注の招き猫。

鈴木:<ビームス ジャパン>で取り扱ってから、何か変化などありましたか?

中外:それまでは問屋さん相手だったのが、アパレルメーカーさんとのお取り引きってだけで新鮮ではありましたよね。それと、おかげさまで、別注をきっかけに社内でも挑戦していこうという機運が高まりました。

鈴木:それはうれしい限りです。

中外:社外にもいい影響がありましたよ。BEAMSとの取り組み以降、若い人たちが会社採用に応募してくれるようになったんです。そういった仲間が増えたのは嬉しいですし、こうしたチャレンジの姿勢により、業界内外から注目を受けたという実感もありますね。

!! S e l e c t b y

TOP-5 GOOD LOOKINGG Maneki Neko

「招き猫なんてどれも一緒でしょ?」と思ってるそこのあなた。実は、濃い顔もいれば塩顔もいて、千差万別。
<中外陶園>さんにあるアーカイブ招き猫の中から、イイ顔した招き猫をランキングでご紹介。

  1. イケメン猫 no.1

    極太眉毛の憎カワ猫!

    「この太くてはっきりとした眉毛がいいんですよ。昭和初期の古いものです。瀬戸の招き猫は、京都の伏見神社のお稲荷さんがルーツ。これもどこか狐っぽいし、おじさんぽくもある(笑)。そこが可愛らしい。前掛け、前垂れがカラフルなのもポイント」(中外陶園)

  2. イケメン猫 no.2

    母性をくすぐる上目遣いにキュン。

    「なんとも言えないですよね、この上目遣い。想像するに、下の方から来客を見上げるように、お店の床に置いてあったのかなと。デザインは昭和初期くらいでしょう。猫は夜目がきくということから、目が黄色くなっているのかもしれません。縁起物で言えば、“先が見通せる”ということですね」(中外陶園)

  3. イケメン猫 no.3

    猫背度は最高得点

    「明治後半に作られた、瀬戸の招き猫の原型である『古瀬戸型』の招き猫です。これが瀬戸の招き猫の原点でありスタンダード。この丸まった愛くるしい猫背のフォルムはずっと変わりません。今よりも狐に近い顔つきです」(中外陶園)

  4. イケメン猫 no.4

    ふてぶてしさナンバーワン!涅槃猫ねはんねこ

    「陶器ではなく、張り子です。しかも寝ている姿は珍しいんです。寝ていてもこの存在感たるや。縁起物で言えば、果報は寝て待て、ということ。福を招きそうな存在感ある顔もいいですよね。昭和のものです。おでこのハートマークはおそらく偶然できたものしょう。こんなところも運のある猫です」(中外陶園)

  5. イケメン猫 no.5

    悪い顔して福を福を招いちゃうfrom東北!

    「東北地方特有のシンボリックな顔つきをしている「招き猫ミュージアム」のシンボル猫です。当初、張り子だったものを、張り子風に陶器で作りました。目を細めている様子など、絵付けにこだわりました。顔の模様は郷土玩具によくある文様からインスピレーションを受けています」(中外陶園)

みんないい顔してるニャ

GOOD LOOKING

第二章 招き猫はこうして作られる。 Making of Maneki Neko

〈中外陶園〉の招き猫は、そのほとんどの製作工程を、職人さんたちが手作業で行っています。そのため、作りがとても精巧で、一体一体の個体差があり、味わい深いくなるのです。ふたつとして同じものはありません。ここからは、そんな〈中外陶園〉の招き猫が、いかにして作られているのかをご覧あれ。

STEP 1

まずはじめに、デザイン画を描き、それをもとに原型師が粘土で原型をつくります。その原型をもとに石膏型を作り、その中に泥漿(泥状の粘土)を流し込み、固まったら余分な泥漿を流し出し、型から外します。

STEP 2

型から外した後は、表面を整えます。取材時は、今年の干支である虎の陶器も同時に製作中。どの工程も、本当に手が抜けないのです。

STEP 3

成型し終えると、ここからは焼成の工程です。このときの招き猫ちゃんも素朴でキュート。

STEP 4

焼成温度は1,050度、焼成時間は約8時間。重なり合わないように丁寧に板に並べ(なんと身長の高さほどに招き猫たちを積み上げます!)、窯に入れます。

STEP 5

焼き上がれば、ここからいよいよ絵付けです。絵具と多種多様な筆を使って、オレンジ、赤色、金色など鮮やかな色と繊細な線を絵付けします。<中外陶園>のスタッフの中には、仏教絵画の修復などを経験した方もいるそう。正確な手さばきが必要なのです。

FINISH

絵付けが乾いたら、愛らしく美しい招き猫の誕生です。

こんなにに丁寧に作られたら
そりゃ〜惚れちゃうよ

C o l u m n b y

Maneki Neko TREVIA

1

人かお金か…いや、どっちも欲しい。

右手 千客万来

左手 商売繁盛

右手は商売繁盛、左手は千客万来。挙げている手が左右どちらかによって、招き猫の意味は変わります。両手が挙がっているのは欲張りだからダメというのは嘘で、実際には両手を挙げた招き猫はいくつも作られています。

2

手の高さで、何を招くかが変わる!?

まずは左手。猫の耳より高く手を挙げていると、遠くのお客を招いていることになります。低いとご近所さんを招きます。逆に右手は、高ければ高いほど、商売繁盛するとか、しないとか…(諸説あり)。

3

色で招くものも変化!

金色 金運

白色 万能

招き猫の色も様々ですが、ちゃんと色の意味があるんです。白は万能、赤は厄除け、黒は魔除け、黄色と金色は金運。ピンクが恋愛運というのは、最近できた説♡

第3章 瀬戸焼と瀬戸招き猫のはじまり。 HISTORY of SETO-YAKI and SETO MANEKI-NEKO

鈴木修司(以下、鈴木):
日本には六古窯(越前・瀬戸・常滑・信楽・丹波・備前)なるものがあります。そのなかのひとつが瀬戸焼ですが、そもそもの定義って何なのでしょうか?

中外陶園(以下、中外):
基本的には瀬戸の土を使えば、瀬戸焼ということになります。また、他の産地と違うところは、瀬戸焼は磁器も陶器も両方が生産できるという点です。

鈴木:瀬戸焼はどうやって始まったんですか?

中外:1300年前に陶器を作るところから始まり、お茶の文化とともに大きくなりました。そして有田焼ができたときに磁器が流行り(1600年代後期)、ここを治めていた尾張藩が危機感を募らせたんです。九州で時期の製法を学んだことで有田焼の技術を持ち帰ってきて、瀬戸でも磁器と陶器、両方を作れるようになっていったんです。

瀬戸市内にある「招き猫ミュージアム」では、
古今東西、たくさんの招き猫を見ることができる。

鈴木:日本全国、色々な焼き物の産地を見ていますが、ありとあらゆる技術がある瀬戸みたいな場所って、珍しいんですよね。瀬戸の招き猫は、いつ頃から作るようになったんですか?

中外:100~150年前です。諸説ありますが、招き猫は江戸発祥で、農家が農業の閑散期に作る民藝品という位置付けでした。やがて京都で人気が出たんです。

鈴木:京都の伏見稲荷神社ですね。

中外:そうです。当時の鈴木さんのような人が、瀬戸でもどう? なんて提言して作られたと聞いています。

鈴木:当時の招き猫の存在とはどういうものだったんでしょう?

中外:テキ屋の的くらいの価値だったようです(笑)。その後、アメリカに住む貿易関係の人を経由して海外でも人気が出たようです。欧米は、暖炉を挟んでその両脇に対称で招き猫を飾る文化ですね。

鈴木:現代では招き猫も。縁起物として特別ですものね。だるまと並ぶ二大縁起物の一つで、人気も高いですし。

中外:以前、鈴木さんは猫グッズ自体が人気がある、とおっしゃってましたよね?

鈴木:そうですね。人気がある上に、猫種は犬ほど多くない。つまり、型数もあまり多くないので、ビジネス的観点で言ってもとてもありがたいんです。

中外:ちょっと話しが変わりますが、最近、瀬戸も猫が増えた気がするんです(笑)

鈴木:それはそれは厚遇されるでしょうね。ビジネスパートナーのようなものですからね(笑)。

招き猫などの縁起物は、ずっと残していくものなので、ぼくは選りすぐりのものに絞って数個だけ持っています。ひょっとしたら骨董の招き猫の購入を考えていらっしゃる方もいるかもしれませんが、新品がオススメです。やはり、商売繁盛とかの縁起物は新品がいいなと思うんです。正直、招き猫が二次流通に乗っているのは、商売がうまくいかなくてつぶれたとかそれなりの理由があるはずなので。

自宅ではインテリアの一部として、窓辺や本棚の間、トイレなどに置いて、自分の視界に入るようにして、ご利益にあやかっています。模様替えをよくするので、ちょこちょこ位置は変えていますけどね。

<中外陶園>さんの招き猫は、オレンジのBEAMSカラーバージョンを持っています。左手を挙げている、つまり、千客万来のもの。実際に新宿の「ビームス ジャパン」のオープン初日には、たくさんのお客さんを招いてくれました。それにオレンジは、だいだい色、つまり代々(だいだい)栄える、ということで家運隆盛のメッセージもあるんです。

これからも
特別な招き猫を
制作予定です。
よろしくニャ♡

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